事務所を移転する時には、さまざまな手続きを行う必要があります。取引先相手だけでなく行政機関に提出すべき書類も多く、期限や提出先が異なるためうっかり間違えてしまうこともあるでしょう。通常業務と並行して移転業務も行うためには、事前の準備をするとスムーズです。
この記事では、事務所を移転する際に必要な手続きや注意すべきポイントなどについて解説します。
オフィス・事務所移転のメリットとデメリット
オフィスを移転することは、大きな費用と手間がかかるため企業にとっては大きなイベントの一つと言えます。移転の理由としては、業績の好調で現在のオフィスが手狭になったり、リモートワークの普及で逆に広すぎてしまったりとさまざまです。移転を検討する時の、メリットとデメリットをあげてみます。
メリット
まずは、新しい環境になるので社員のモチベーションアップが見込めます。社員同士のコミュニケーションの活性化や連帯感の深まりによる愛社精神の向上、企業のブランドイメージの向上によって優秀な求職者や社会的信用の向上が期待できます。
コスト面では、広すぎたオフィスを手頃なサイズにスケールダウンする場合、賃貸料などのコスト削減が可能になります。
デメリット
デメリットは、費用と時間がかかることです。退去の時は、原状回復工事が必要な場合がほとんどです。さらに現在の面積より広いオフィスに引っ越す時は、新しい備品の購入なども必要になり費用が掛かります。
また、デメリットになり得ることとして、働きにくいレイアウトや以前よりもアクセスが不便になってしまった場合は、せっかく移転しても社員のモチベーションが低下する恐れがあります。そうならないように、物件の場所や周辺環境、オフィスのレイアウトは特に重要です。
会社移転でやること
移転先を探す時には、いつから入居できるかの入居可能時期を確認し、解約から入居までをスムーズに行うことが大事です。
無事に移転先が決まったら、現在使用しているオフィスに関する手続きと、移転先のオフィスでする手続きがそれぞれあります。それらは、引っ越し作業や住所変更のお知らせを取引先に知らせるタイミングなどもあるので両者を同時並行で進める必要があります。
移転する目的を事前に社員に周知し、現在のオフィスの使いにくい部分や要望といった課題・改善点・アイデアを吸い上げるチャンスです。
旧オフィスで行う手続き、新オフィスで行う手続きをそれぞれ以下にまとめました。
オフィス・事務所の解約予告
旧オフィスの賃貸借契約書の内容を確認して、解約通知を提出します。一般的には退去する半年が期限とされています。
オフィスの原状回復工事
退去の際には、基本的に原状回復工事が必要です。原状回復工事は借り手負担ですので、管理会社から指定がなければ自分たちで専門の工事業者を手配しなければなりません。
その際、管理会社に原状回復の範囲を事前に細かく確認しましょう。汚損部分だけの部分修繕で済む場合もあれば、全面的に修繕が必要になり負担が増える場合もあります。管理会社との原状回復工事の度合いを確認してから、業者に見積もりを依頼して工事のスケジュールを確定します。
業者の選定から手配が必要な場合は、時間が掛かることもあります。移転の話が出た際に複数の業者をピックアップしておくとその後の流れがスムーズでしょう。
移転後の物件探し
物件を探す際には、複数のポイントがあります。
例えば、物件の入居可能時期、最寄りの駅からのアクセス、周辺の環境、ビル内の施設の有無、セキュリティ面など、ざっとあげただけでも多くのポイントがあります。移転後の物件を探す場合はオフィス専門の仲介業者に依頼するのが一般的です。
また、現在のオフィスの改善点や新しくスペースを作るなどのアイデアを社内に募っている場合は、それらの点が実現可能かどうかも確認しながら選考しましょう。
内装工事の手配
無事に新オフィスが決まったら次は内装やレイアウトの工事が必要です。工事なので、こちらも複数の専門業者に相見積もりを取るのが一般的です。レイアウトが決まってから、内装の詳細を決めていくのが通常の流れになっています。
電話回線・インターネット環境の整備
新オフィスの電話回線やインターネット環境を踏まえ、利用する社員の人数や用途によっては、追加で環境整備工事などが必要になります。新オフィスで新たなセキュリティ対策を入れるなどの追加や変更がある場合は、旧オフィスとの環境が異なってくるので注意しましょう。
引越業者の手配
こちらも相見積もりが基本です。見積もりを依頼する前に、旧オフィスからどれくらいの物を移動させるのか、また廃棄する予定の備品類の有無やその内容などをピックアップします。荷物を移動させるだけでなく引っ越す時には不要になった備品を廃棄する場合が多いので、廃棄まで担当してくれるかなども判断ポイントです。
取引先への連絡
直接の取引先以外にも、金融機関や行政各所にも住所変更のお知らせをする必要があります。その他、名刺やホームページ、社判や契約書など住所が書かれているアイテムは、全て新オフィスの住所に変更しなければなりません。社員が使うアイテムの刷新は、新住所が決定次第すぐに取り掛かれる作業なので、早めに動き始めましょう。
移転時に必要な手続き・申請
移転し住所が変わるため取引先以外にも、担当行政で各種手続きが必要になります。主な8つの行政機関を紹介します。それぞれによって申請の期間や、必要な書類の名称や手続き時に持参する書類が異なります。
移転業務は、通常業務を行いながらの作業になるので忙しくなりがちです。行政への申請は事前に必要な書類があったり、万が一手続きを忘れてしまうと指導が入ってしまったりする場合もありますのでご注意ください。
警察署
社用車を使っている時は、車庫証明と略される「自動車保管場所証明書」の提出が必要です。車の保管場所の確保等に関する法律において、車庫証明の住所変更は引っ越しをしてから15日以内に行うことが義務付けられています。
消防署
書類名は「防火対象物使用開始届出書」と「防火対象物工事等計画届出書」、さらに「 防火・防災管理者選任(解任)届出書」と「消防計画作成(変更)届出書」の4通が必要です。
申請期間は、移転の流れにそって以下の流れになります。
- 「防火対象物工事等計画届出書」は、新オフィスの内装工事をする時は着工の7日前までです。
- 「防火・防災管理者選任(解任)届出書」と「防火対象物使用開始届出書」は、新オフィスの使用を開始してから7日以内に提出します。
- 「消防計画作成(変更)届出書」は、オフィスを移転する7日前までとなっています。
郵便局
書類名は「転居届」です。注意点として、転送される期間は転居届を提出した日から1年間のみです。
銀行口座・クレジットカード
書類名や申請期間などは各社それぞれ異なりますが、取引している金融機関への連絡は、3ヶ月前が目安となっています。
法務局
書類名は「移転登記申請書」です。申請期限は、本店と支店で扱いが異なります。本店なら移転した日から2週間以内、支店なら3週間以内です。
労働基準監督署・公共職業安定所(ハローワーク)
労災保険は労働基準監督署、雇用保険は公共職業安定所(ハローワーク)にそれぞれ手続きが必要です。
労働基準監督署
書類名は「労働保険名称、所在地等変更届」で、申請期間は移転した翌日から10日以内になっています。
社印を押す様式なので、社判など持参が必要です。その他にも「労働保険確定保険料申告書」や「労働保険概算保険申告書」「成立届」などの届が必要な場合もあります。
公共職業安定所(ハローワーク)
書類名は「雇用保険事業主事業所各種変更届」です。申請期間は、移転した翌日から10日以内です。変更届を提出の際は「労働保険名称、所在地等変更届」の控えと法人登記簿謄本のコピー、社印が必要です。
年金事務所
書類名は「適用事業所所在地・名称変更(訂正)届」です。申請期間は移転から5日以内です。提出時には、法人登記簿謄本のコピーが必要です。
税務署・都道府県税事務所
国税は税務署、地方税は都道府県税事務所にそれぞれ申請が必要です。
税務署
書類名は「異動届出書」です。給与の支払いがあるなら「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」も提出が必要です。消費税の対象であり、税務署の管轄が変わるなら「消費税異動届出書」の提出が必要です。
期間に関しては、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」のみ移転した日から1ヶ月以内となっていますので忘れずに手続きを行いましょう。
都道府県税事務所
提出する書類や期限は自治体によって異なるため、事前に問い合わせが必要です。法人登記簿謄本のコピーが必要な事務所もあるようです。
費用やスケジュールなどを事前に確認して、準備を進めよう
オフィスや事務所の移転には費用や手間がかなりかかります。通常業務と並行して移転業務も考えると、可能であれば1年程度前から早めのスケジュールを立て始めるのが理想的といえます。
移転は担当部署だけでなく、社内全体を巻き込んで現状の把握や要望などの洗い出しができる絶好のチャンスです。また、移転によって、社内全体のモチベーションアップや企業イメージの向上なども期待できます。
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